散らかった六畳間へのメッセージ

好きなことを好きなだけ。

【ネタバレ有】眠れない真夜中に放送していてほしい実写映画・おそ松さん

「頭をからっぽにして…」


実写化された「映画 おそ松さん」の宣伝の際に幾度も聞いたこのフレーズ。


作品を見る前は、

こんなご時世だからこそ脳内を埋め尽くしているたくさんの物事や感情をいったんロッカーに預けてこのギャグ映画を味わい笑顔になろう

といった意味合いだろうと解釈して近所の映画館に向かった。


しかし上映中、私は主演のSnow Manが念を押すかのようにこの宣伝文句を多用していた意味を思い知ることになる。(彼らがそんなつもりだったわけではないと思う)


なぜなら場内が明るくなった時に最初に感じたことが「脳みそのキャパオーバー」だったからだ。

頭からっぽにして臨まないととんでもない情報量のエネルギーを投げつけられるぞ。

(上映終了が迫る中でも注意喚起)


※筆者の状況:Snow Manファン歴1年半ちょっと、アニメおそ松さん未視聴だがA応Pの主題歌好き(TIF現場参加歴あり)
おそ松さん大好きな友人の教え等で基本知識は取得済、先にアニメ見ようか迷ったけどいっそ映画を見てからにするかと決意

上記によりドルオタ目線バイアスはあるかもしれない。
本作出演者の顔が美しいことは常識なので割愛、原作再現度や解釈についての一致不一致問題は未履修が語るべきところではないので割愛。
あくまで「映画館に映画として見に行って作品をどう感じたか」という感想です。

 

 

↓以下ネタバレもあります↓

☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 


結論、映画としてとにかく自分の好みドストライクだった。脚本と演出と音楽の力が強すぎてびっくりした。


まず、松野家の六つ子のクズエピソード・下ネタ連投からの兄弟仲良し話と続き「こんな感じで何個も小さなエピソード消化する感じで進むのか…?」と戸惑うが、その想像をはるかに超える数のエピソードをこなさないと映画が終わらないことに途中で気付く。


少し中だるみしそうなところでしっかり大富豪と出会い物語が加速するのがとても気持ち良い。しつこいくだりもあるがそれもしっかり演劇になっていて、勢いで笑かすところもあったがそれだけではなかった(後半の一同が集まる大詰めに向けて仕込んでいくところもたくさんあった)からか、舞台を観ているみたいだった。ギャグ映画なんだけどシチュエーションコメディ。え、どう違うの?ニュアンスの問題…

(知ったかぶりすな)

(定義で考えるとセットが幾多にも及ぶ物語なのでシチュエーションコメディと呼べないのかもしれないけど、物語の雰囲気はコントとか舞台とか本当にそのニオイがしたのでそういうニュアンス。語彙がなくてすみません。誰かわかってくれ)

 

ラストの好みは分かれると思うし時に表現の仕方がお、おう…となったりもした点も含めてのそれ。オチが終盤になってから一気に来るコントグループの新作見せてもらった気分。


(そういえば舞台でも映画でもないってキャッチコピーの舞台映画あったよねちょっと前に。あ、その主演もSnow Manだったわ)

 

 

六つ子がそれぞれ主人公になってラブストーリー・デスゲーム・アクション・時代劇を展開し始めるんだけれどこれがいわゆる「映画あるある」のオンパレード。


設定全部なんかで見たことあるのが凄い。ラブストーリーなんてもう「君の名前」聞いちゃってるし。これ進〇ゼミで見た!って言いたくなるかのようなデジャブ要素の作り込みの巧みさ。

この2時間弱で映画何本観た気になるつもりなの、私?


取っ散らかったところに現れるオリジナルキャラ「物語終わらせ師」。この登場のタイミングが抜群。だってオリジナルキャラという「実写化最大の地雷案件」をカオス過ぎて劇場内の空気が困惑し始めた頃に投入するのよ?


観客にとって「問題点」が「救世主」に変わる瞬間をこの目で見ました。


がんばれ終わらせ師。あの六つ子らを止めろ。主人公を止める側を場内ほぼ全員がきっと応援してしまったであろう奇跡の展開。


ポンコツ終わらせ師。六つ子、なぜか物語を終わらせない方向に自らの意思で動き出す。なんだその勘の働かせ方は。その発想力と行動力あれば本当はなんでも出来そう。布団には愛だから仕方ないか。


不憫終わらせ師。最終的に姿形変わるまで己を犠牲にしてしまう終わらせ師。どうして…

 


終わらせ師最終的にフラッフラだけれど(ピリオドは相棒が出来てエナジーチャージしちゃってるけど)物語がムリヤリながらひとつに収束していくところは「今映画観てる~!!」て、特大エンタメ感じてました。そういう瞬間が好きなので自粛続きだった身に沁みた。嬉しかった。

 

 

 

そして劇中の音楽の破壊力がこれまたとてつもない。主題歌「ブラザービート」が物凄いインパクトを持っている楽曲で耳から離れないのに(これについてはまた別の記事で言及出来ればいいな)、映画終わったとき脳内をかけめぐるのは挿入歌。


淡い色の映像に載せられたエモめのロックバラード。極道から抜け出せなくなってしまった男のバックで流れるのは夜の街に似合う英詩ラップ。サントラください。

 

 

 

クセが強すぎる中にも「映画大好き、演劇大好き」が詰まった脚本・演出・音楽のマリアージュに添えられたSnow Manも舞台班仕込みのテンションで(でも舞台発声じゃなかったので演技ちゃんとしてるんだなって思った)(失礼)、
振り切って演じていただけにしっかりカオスな世界観に没入して観ることが出来た。

 

 

 


実写版の「映画 おそ松さん」、とにかく「映画を観に来た!」と強く感じられる最高のエンターテインメントだったのだが、これは万人にウケる大衆向け超大型ヒット見込み映画とは全然ベクトルが違う

「深夜2時に眠ることを諦めてテレビつけたら集中して見てしまいそうなシチュエーションコメディの劇場版」

といったポジション。


(この解釈してる時点でおそ松さん実写の概念としては正解を叩き出しているってことじゃん、と後から気付いた。)


そう考えると深く刺さる人もいれば一切刺さらない人もいて当然なわけで、評価がわかれまくっているのも頷けるしそれすら面白い。

公開していた劇場数などは妥当な感じだと思ったのにこの規模で興行収入いい線行ったのがミラクル過ぎて最高だなといった感じ。


私は映画をたくさんは観に行けていないのでこの辺の事情詳しくはないのだが、正直この手の作品(脚本がひたすら巧い~って思わず唸ってしまう作品)ってテレビドラマでは意外と数字に結びつくのが一握りな気がしているので。第一印象のインパクトなんぼ、センセーショナルなんぼの世界なので。


だから、ここまで作品を当てたキャストや原作の話題になれるパワーは凄い(出会わせてくれてありがとうと思った)し、監督をはじめとしたスタッフがこのボリュームを2時間以内にまとめた力量に感服した。

 

監督は昨年東京リベンジャーズの実写をヒットさせた英勉氏、脚本はウレロやLIFE等も手掛けている土屋亮一氏。音楽はアニメと同じ橋本由香利氏。

 

このお三方は今後もとにかくチェックしまくりまっせ!