散らかった六畳間へのメッセージ

好きなことを好きなだけ。

普通の恋と味噌ラーメン

 

ドラマ「消えた初恋」にハマっている。

 

 

「消えた初恋」は消しゴムにまつわるとある勘違いをきっかけに始まる青春ラブコメディ。人気少女漫画が原作で、若手ジャニーズアイドル2人の恋愛モノとしても話題になっている。

 

物語の中で男子高校生同士の恋愛が描かれているが、秘めたる恋としてセンセーショナルな演出をするといったことはなく、かといって完全にパラレルワールドな「すべての価値観が当たり前に認められた優しい世界」というわけでもない(勿論、そのような描き方の作品にも名作はたくさんある)。

私達が過ごしているこの世界のどこかで起きていそうな、ひとつの日常系作品としてのナチュラルな仕上がりに個人的には心地よさを覚えた。これも時代の変化、というやつなのだろうか?(ヒット作「きのう何食べた?」なども近い印象を受けた)

 

さて、この作品で私の心に刺さりまくっているシーンがある。第8話のラーメン屋のエピソードである。

 

↓以下ネタバレ↓

 

 


物語は色んな出来事を経て青木・井田の男子高校生カップルが誕生。少しずつながら順調にお互いの距離を近づけているあたり。
第8話では教育実習生の岡野が歩道橋で手を繋ぐ青木と井田を目撃してしまい、それまで仲良く交流していた青木を遠ざけてしまった。

本当はテストで満点を取ったら青木と岡野が一緒に行くはずだったラーメン屋。兄のように慕っていた岡野に拒まれショックを受けた青木は、そんな自分の様子にいち早く気付き言葉をかけてくれた井田とラーメン屋に行くことに。

しかし岡野と遭遇。口論ののち井田との交際を宣言し「岡野先生偏見ヤバイよ」「俺、何も変わってないよ」と真っ直ぐ言い放つ青木、何も言えなくなる岡野…。

一緒に入店することになった3人。岡野は青木と井田の関係を知ったことは約束を断る理由としては不適切だったと謝罪する。3人が注文したラーメンは、味噌・醤油・塩とバラバラに分かれた。
「見事にバラバラだな。ここは味噌がウマいんだぞ」と店の看板メニューを頼むことを普通と捉える岡野だが、それぞれの好みを迷いなく選び味わう2人を見ながら「何を好きだろうと人の自由だしな」と呟くのであった…。

 

 

ここまで二人の関係に否定的な存在が登場したのが初めてであったため、劇中で嫌なヤツ感を一手に引き受けた岡野。だが、彼こそが、いや彼が頼んだ味噌ラーメンこそが(?)私の心に刺さってしまった。

恋愛に限らず、自分がこれまで抱いたことがない考え方に対してどう向き合うのか、特に教育に関わる立場なら学ぶ機会もあったであろう岡野が咄嗟の言葉で生徒を傷つけてしまう過ちからラーメンの味でひとつの気付きを得るまでが物語として実に鮮やかな流れであった。

「多様性を認めよう!互いを理解し合おう!」口にするだけでも大きな意味はあると思うけれど、実際には自分と異なる価値観を理解するのはきっと簡単なことではない。考え方が違うのだから、それが当たり前だ。

そんな時はラーメン屋くらいのノリで、「君はその味にするんだね、ふーん」でいい。他人の好みについて心の底からは理解出来なくたっていい。「そんな価値観も存在する」ことを知り、認めればいい。ただそれだけのことさ。

 

ラーメンを通して「気付き」があった岡野、いい教師になれるといいね。最強の好青年・井田にメンチ切られたままだけど…


改編している部分はあれど、かなり原作に忠実に進んでいる本作(ドラマ効果で最新号まで原作読破済←)。

普通とは何なのかを真正面から考えさせられる場面が多い。

「ウケねえよ」
「ちっとも変じゃないよ」
「その普通が間違ってるだろ」

青木の井田への恋心を決してなかったことにはしない台詞の数々。

 

アイドルオタク向け青春ラブコメの皮を被ったとんでもない傑作ドラマ、消えた初恋。ラスト2話も堪能させていただきます。

 

TVer

消えた初恋

第8話(12/11 23時まで視聴可能)

https://tver.jp/corner/f0089963

総集編

https://tver.jp/corner/f0090744